UNIX の楽しみ

もう 50 年を越える年月になりますが、 紙テープやカード時代のコンピュータから始めて、HP の優れたプログラム電卓やデスクトップ・コンピュータ、COBOL 時代のコンピュー タ、懐かしい PET 等の初期のパーソナル・コンピュータと、自分たちの仕事に能率 と楽しみを与えてくれたコンピュータの世界で、比較的早い時期に、「UNIX」に出 会えたことは、真の好運でした。

私達が事務処理や技術計算に Unix を使いはじめた当時は、Unix の本もなく、 「UNIX はプログラマ向きのOSで、事務処理には向かない」などと本気で言う人 もいましたから、かなりめずらしがられたのか、例えば、栗田昭平著「コンピュー タ技術最前線」(共立出版)の92−93ページには、次のような記述があります。

「UNIXは生い立ちがそうであったように技術者に馴染まれやすいOSといえそ うだ。とはいえ、モガミ電線のようにUX−300、300F、700を入れ、積 極的に事務処理に適用し効果を上げている例もあり、今後はこういうケースが増え るという見方もある。」

その後の、アメリカや、日本でも大学を中心にした UNIX の普及、ダウンサイジン グとオープン化の流れ、Linux や FreeBSD に代表されるパーソナル・UNIXの 実用化で、もうこういった偏見もなくなったように思いますが、こんどは、ホビー 指向が強くなって、大切な部分が見えにくくなったような気がします。

Unix の本も書店のかなりのスペースを占めるようになりましたが、ホビーや大学、 オペレータ向けの対話処理が中心で、実務向けのものがありません。

コンピュータをホビーや対話の相手に使うのも楽しいのは事実ですが、自動化や省 力化に使うのも、本来の用途のひとつで、この場合、UNIXはまさに奇跡を生み だします。理由は、システム構築のほとんどが、エンド・ユーザでできてしまうた めですが、逆に見ると、コンピュータ業界としては、売るものがなくなることでも あり、ユーザにたいする情報も少なくなります。つまり、自分で気づいて、自分で 考えるしかないのです。

最近のOSには、次の2種類があるように思います、

1) Windows や Mac に代表される、ユーザがお金を払うためのOS
2) 古典的な Unix に代表される、ユーザがお金を生み出すためのOS

あるいは、

1) 覚えて(短時間)面白がる OS
2) 理解して感動する OS
ここでは、後者に興味を持つ人々のために、折にふれて私たちや友人が書いた原稿 やメモをリンクしておこうかと思います。

なお、これらのドキュメントは、全てではありませんが、TeX 形式のものもありま す。

平林 浩一