Lox In Box II

ふと買ってみた ログインボックスは Vesa Timonen の Lox In Box II そのものですが、実によくできた作品でした。

8 個の Lox (英語の Log - 丸太) を長方形の箱に詰め込むという簡単な課題ですが、 見掛け程簡単ではありません。

しばらく試行錯誤を続けた結果、あきらめて、少し論理的に見直してみる方針に切替え ました。 組み合わせ問題としてコンピュータで解くには嫌な形状ですから、 すべてをコンピュータで扱うのはあきらめて、 一部の寸法の組合せについてのみ簡単な awk スクリプトで確認しました。

このパズルの幾何学的寸法を調べてみると、まず、ログについては、 長軸に対して 45 度で切断した 4 種類の長さのログ 2 組から構成されていて、 ログの直径で規格化した(ログの直径を 1 とする)寸法は下記のようになっています。 呼称はこの後の解析のために付与したものです。

呼称長辺短辺
A2 + sqrt(2)1 + sqrt(2)
B2*sqrt(2)2*sqrt(2) - 1
C1 + sqrt(2)sqrt(2)
D2*sqrt(2) - 12*sqrt(2) - 2

箱の寸法は幅が 4*sqrt(2)、高さが 3 の長方形ですから、 4 組のログをそれぞれ斜めの切断面どうしを向かい合わせに接触させて、 1本の棒にしたときの横から見た面積の合計と一致し、 隙間なく詰め込める可能性があることがわかります。 つまり、上記の長辺の長さを持つ短冊の片端を 45 度の角度で切り落としたものを 箱の寸法に等しい長方形に敷き詰める問題と等価ですが、 丸棒にしたため、棒の回転という自由度が加わって、 挑戦者を迷わせます。

そこで、探索すべきログの組み合わせの可能性を減らすことにして、 隙間なしに箱を埋めるためのログの置き方としては、箱の縁との接触条件から、 縦、横、斜め(45 度)のいずれかになりますが、縦方向の組み合わせで、 箱の高さ 3 が作れないことは、すぐわかります。

つまり、ログを置く方向としては、横か斜め(45 度)しかありませんが、 任意のログを 3 本横に並べる場合は縦方向が 3 になって、 箱の縦寸法と一致しますから、このパターンが含まれるのは間違いありません。

となると、ログの一部は斜めに置かざるを得なくなって、 斜めの面がケース上端に接する配置が含まれるはずで、 2つのログの斜面がそれぞれケースの上面と下面に接触する組合せで、 高さが 3 になり、しかも、組み合わせたときの辺の長さが 前期の表の長さやログの斜面の長さの組み合わせになるものを探すと、 1図の配置で (A, D), (B, C) の 2 種類です。 ログの切断角度を 45 度にしたため、同じ高さ 3 でも、 2 種類の組み合わせが生まれるのですが、 これが、このパズルの鍵になっています。

1図 箱の高さと一致する斜め置き配置

次に、ログを横に2つ並べて、両端が箱に接して、45 度配置のログを入れるために、 斜辺の間隔がログの斜辺の長さに等しくなるような組み合わせを調べると、 2図で w = 4*sqrt(2) を満たす組み合わせは (A, D), (B, C) の2種類です。

2図 箱の幅と一致する横置き配置

さらに、ログを横に2つ並べたとき、斜辺が直線になって、 斜めに置いたログに密接できる組み合わせは、 3図の (A, C), (B, D) の2種類ですから、

3図 組み合わせの斜辺が直線になる配置

1図の組み合わせを考慮しつつ、 2図の条件と3図の条件を同時に満足する組み合わせを考えると、

  +------    ---+
  |  A  / ? / D |
  +----  ?  -----
  | C / ? /  B  |
  +--     ------+
の配置を箱の上辺か下辺に接するように置いた状態しかないところまで絞れますから、 後は1図の組み合わせの一部が「???」の隙間に収まる配置を探すと速そうです。

私の場合は、ここまでの計算を awk の簡単なスクリプトで確認し、 この後は僅かな試行錯誤で解にたどりついたのですが、 この程度の考察でも、解の探索範囲を大幅に狭められるのが面白いです。

なお、同じ作者の前作 Lox In Boxは僅かに隙間が残る設計で、 この作品ほど綺麗ではありませんが、 これと同じ手法で、簡単に解けます。

平林 浩一, 2010-08