減価償却資産の償却率表 (別表第九)

1月末は地方税の償却資産の申告期限ですが、長年使える設備資産は、耐用年数に 応じて、何年かに分けて償却する、つまり、将来の買い替え・回収を目的に、 資産を経費に転化させてゆくことは、ほとんどの方がご存知だと思います。

この償却の方法には、毎年均等に経費化する「定額法」と、毎年一定割合を経費化 する「定率法」がありますが、一般的な状況で合理性の高い「定率法」の場合は、 次のようなルールで償却を進めます。

  a) 耐用年数経過時に残存価額が 10 % (注 1)になるような償却率を使う。
  b) 耐用年数経過後は同じ割合で 5 % になるまで償却を継続する。

この償却の仕方を決めるルールが「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(別表 第九)ですが、「定額法による償却率」の作表規則は、上記 a) の規則に、次の 規則を追加して作ったということです。

  x) 償却率は小数点以下第4位を切り捨てる。

ところが、この計算を正確に実行すると、省令の定める表と5箇所で、最終桁に違い がでますから、例えば、awk で書くと、次のような例外処理が必要になります。

  # 耐用年数 n から残存率(未償却残存額/取得価額) r を求める
  n = 耐用年数
  r = 1 - exp(log(0.1) / n)
  r = int(r * 1000 + 0.5) / 1000
  if (n == 24 || n == 34 || n == 77 || n == 85 || n == 93)
	r += 0.001;	# 税法がおかしい

多分、表を作成する段階で計算を間違えたのだろうと思いますが、省令ともなると、 この「間違い」に従うしかありません!

さすがに日本の文系エリートのお役所だけあって、大蔵省自ら、計算ミスを奨励(省令 ?)し、理工学離れを指導しているのかもしれませんが、もっと深刻なのは、

「計算式」や「アルゴリズム」でなく「表」の使用を強制
することです。すでにコンピュータ処理が日常となっている以上、「計算式」と「 アルゴリズム」こそが基本で、例外と引換に手作業の手間を省いた「表」は過去の 遺物にすぎません。しかし、税法の世界は、未だに、コンピュータやプログラム電 卓は認知されないのです。

この時代錯誤は、所得税の計算では、さらに徹底し、ルールを必要以上に複雑化し、 課税計算の不公平に荷担します。例えば、給与所得控除の計算を調べてみてください。 時代錯誤の思想に、びっくりすると思います。

減価償却を納税側から見ると、 またいろいろ面白い問題があって、 興味をお持ちの方は、続けて お読みください。

また、2007 年 4 月以降に入手した償却資産については、 おそまきながら、残存価額を廃止し、低率法については、 250%低率法という、 定率・定額折衷方式になりました。 既に取得済みの資産は、償却が終った後、 5年間で均等償却します。

注 1 - 残存割合

無形減価償却資産、鉱業権、坑道等では 0、生物では 5 % から 50 % と、 10 % 以外もあります。

平林浩一, (C) 1997