ケーブル断面の模式図

円形ケーブルや撚線導体等、電線の構造には、円柱状の素材を撚合わせたものが多く、 当社の図面を含めて、その断面図には真円の組み合わせが使われています。


1図 ケーブル断面の模式図の例

例えば、1図は、同一素線径の12芯ケーブル、すなわち、 撚合わせた3本の素線を芯(core)にして、9本の素線を撚合わせるという、 典型的なケーブル構造ですが、この撚ピッチが無限大で、円柱を平行に並べただけなら、 間違いなく、断面は真円になります。しかし、実際の電線は、 曲がった円柱からできていて、素線の断面が「円」になるはずがないし、 円柱を斜めに切ったときの断面である「楕円」になるとも思えません。

つまり、この種の図面は実際の製品の断面を表しているわけではなくて、 だいたいの形を伝えるための模式図にすぎません。この例の構造にしても、 撚構造である以上、内層の3芯を含めて、素線断面が真円になるはずがないのですし、 外層の素線間の隙間もほとんどないのが現実です。


2図 1図の撚線構造の実際の断面

では、実際の断面がどうなっているのかというと、 これは、2図のようになっているのです。 一見、楕円とも思える、多少ゆがんだ円形になって、 外層の素線間の隙間がなくなっていることに注意してください。


3図 外層の素線を1本減らしたとき

現実のケーブルとしては、同じサイズの素線をたくさん集めて同心円状にまとめる場合、 一部の例外を除いて、 各層の素線数はその直下の層の6本増しという設計が多いのですが、 これを5本増しにしてみると、3図のようになって、断面のゆがみがよくわかります。


4図 さらに極端にすると

さらに極端にして、撚というより巻き付ける感じになりますが、 外層の素線数を内層と同じにすると、4図のようになります。 2図や3図では、まだ楕円に近い印象を受けますが、ここまでくると、 楕円とはまったく別の形状であることがよくわかります。

さて、この撚素線の断面というのは、いったい、どういう形なのでしょうか? 高校レベルの解析幾何学で表現できるものなのでしょうか? それとも、もっと別の数学的手段が必要なのでしょうか? また、ゆがみが小さいときは楕円と考えてよいのでしょうか?

これが、今回の問題です。

平林 浩一, (C) 2006


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