ツインリードの実効誘電率


図1 裸導体から構成された往復回路

裸導体と空気だけで構成されたツインリード(twin lead - 2芯平行線)のキャパシ タンスは下記のように簡単に計算できます。(注1)

  C = 2*π*ε/acosh((D^2 - 2*a^2)/2/a^2)               (1)

  ここに
	C = キャパシタンス (F/m)
	a = 導体半径 (m)
	D = 導体間隔 (m)
	π = 3.14159265358979..
	ε = 誘電率 (F/m)
	   = εs*ε0
	εs = 比誘電率 (空気はほぼ 1)
	ε0 = 真空の誘電率 (F/m)
	    = 1e7/4/π/c^2
	c = 真空中の光速 (2.998e8 m/s)
acosh(x) は逆双曲余弦関数ですが、これは対数関数を使って下記のように変換すれば、

  acosh(x) = log(x + sqrt(x*x - 1))
導体間隔が大きくて a << D が成立するという条件で、

  C = 2*π*ε/log(D/a)
という、よく見掛ける近似式になります。誤差は D/a = 2.7 で 1 % 以下、 D/a = 4.3 で 0.1 % 以下になります。


図2 絶縁導体の対から構成された往復線路

一方、現実に使用可能な電線では絶縁体が必要ですから、図2のような構成が最も 自然かつ一般的ですが、単に絶縁体を追加しただけで、突然計算が難しくなって、 近似値で間に合う場合は、「実効誘電率」(efefctive dielectric constant) という概念を使うことがあります。

これは、ポリエチレンと空気といった、複数の誘電体から構成される構造でも (1) 式が使えるような、実効的な比誘電率 εe を考えるもので、その値を得る ためには、正確な計算かサンプルの実測しかないという矛盾はありますが、 少なくとも、この実効的な比誘電率が空気の比誘電率と絶縁体の比誘電率の間の どこかにあることは確かで、

  1 < εe < 絶縁体の比誘電率
と断定することができます。 例えば、ポリエチレンなら、εe は 1 と 2.3 の間のです。

さて、この実効誘電率は同じ絶縁材料でも、絶縁体の厚さによって変わってきます。


図3 ツインリードの絶縁体を無限に薄くしてゆくと ..

どう考えても、絶縁体が厚くなれば、実効誘電率は絶縁体の誘電率に近付き、 絶縁体が薄くなれば、実効誘電率は空気の誘電率に近付くことは確かですから、 図3のように、絶縁体の厚さを無限に薄くしてゆくと、実効誘電率は空気の誘電率 である 1 に近付くのは当然として、はたして、その極限値はどうなるのだろう というのが今回の問題です。

絶縁体の薄さが無限に薄くなれば、空間のすべてが空気になるわけで、 実効誘電率の極限が 1 になるのは自明と思われますが ..

注1 - (1) の標準的な計算法

普通、「等角写像」(conformal mapping)を使うか、「電気影像法」 (method of images)で計算します。簡単ですが、必要なら「電磁気学」の本を見てください。

平林 浩一, (C) 2000


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