受端開放ケーブルの等価回路

特性インピーダンス Z0 のケーブルの受端にインピーダンス Zt の負荷を接続した とき、受端の反射係数 r が

  r = (Zt - Z0)/(Zt + Z0)
になることはよく知られています。

Zt = Z0 なら無反射で伝送されたエネルギーのすべてが負荷に吸収され、Zt = 0 の短絡状態なら r = -1 で電圧が逆位相で 100 % 反射されますから、負荷の電圧は 0 になります。

ところで、ケーブルの受端に何も接続しない、いわゆる「受端開放」の場合は、受端 にインピーダンス無限大の負荷 (Zt -> ∞) が接続されたと考えてよいのでしょうか。 つまり、

  o---------------o        o------------o---+
                                          +-+-+
      Z0, l          ==         Z0, l     | Zt| Zt= ∞
                                          +-+-+
  o---------------o        o------------o---+

     Fig. 1                   Fig. 2
上記の Fig. 1 と Fig. 2 は等価だろうかというのが今回の問題です。

実際、多くの文献で、このふたつを等価なものとして扱っていて、例えば、 非常にしっかりした本、

  岸源也,- 通信伝送
    (コロナ社, 1961)
にも、
  3.4.3 受端を開放した線路
  ..
  受端を開放した線路において、受端の反射係数 rR は、

    rR = (ZR - Z0)/(ZR + Z0) = (∞ - Z0)/(∞ - Z0) = 1       (3.162)

  となり、電圧は受端に置いて大きさ位相とも等しく反射され、電流は大きさが
  等しく逆位相に反射されることになる。
  ..
と記述されています。

それに第一、終端開放ならその先に電流が流れるわけがないし、

  インピーダンス = 電圧 / 電流
なのですから、負荷インピーダンスで考えたら「無限大に決まっているわけで、考 える必要もないではないか」とも思えます。

平林 浩一

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