パルスの立上り時間とケーブルの長さの関係

1図は、典型的なケーブルのステップ応答、つまり、ケーブルの始端に突然電圧を 加えたときのケーブル終端の電圧波形で、これがわかれば、如何なる波形の出力も 計算できるという意味で、パルス伝送波形の基本になります。

[Step response of the cable]
Fig.1 比較的短いケーブルのステップ応答

この波形は、質の良いケーブルの、あらゆる条件で成立する、極めて一般的な形で あることに注意してください。もっとシャープな波形を見たことがあると感じる方 も多いかと思いますが、拡大すると、この波形になっているのです。

さて、パルス波形の伝送では、ケーブルが長くなると、波形が鈍って、立上り時間 が長くなることは、ほとんどの方がご存知だと思いますが、例えば、同じケーブル をもう少し長くすると、2図のようになります。

[Step response of long cable]
Fig.1 同じケーブルを長くしたときのステップ応答

このパルス波形がどの程度鈍るかの指標としてよく使われるのが、「立上り時間」 (risetime) で、これは、普通の回路では、10 % から 90 % 達するまでの時間とし て定義されることが多いのですが、ケーブルの場合は、立上りの始めの部分が急で、 終りに近付くにしたがって遅くなりますから、ここでは、50 % に達するまでの時 間をケーブルのパルス波形の「立上り時間」と呼ぶことにしましょう。上図の「t0」 がその時間です。

万一、この定義が気に入らない方は、典型的なケーブルで成立する、次の関係を使 うと、普通の回路の立上り時間に換算することができます。

10-90% risetime = 28.6 * 50% risetime
この「=」は「近似的」に等しいという意味です。正確には、28.64.. になります。

ところで、ケーブル伝送で波形が鈍る原因が、ケーブルの減衰歪みと位相歪みにあ ることは、線形回路理論から、容易に理解できると思いますが、このどちらの歪み もケーブルの長さに比例します。例えば、ケーブルの長さが2倍になれば、減衰も 2倍になります。

だとしたら、

*************************************************
立上り時間もケーブルの長さに比例するのでしょうか。
*************************************************
それとも、立上り時間とケーブルの長さの関係は、もっと複雑で予測のつかない ものなのでしょうか。

これが、今回の問題です。

平林 浩一

ホームページに戻る