FreeBSD-12.1 で FreeFEM v4.42 をコンパイルする方法

2, 3 次元の偏微分方程式を解くためのプログラム FreeFEMは macOS, Linux, Windows の compile 済みバイナリが用意されていますが、 FreeBSD で使う場合は自分で compile しなければなりません。

FreeFem v4.4.2を FreeBSD で compile する場合の注意点は下記のとおりです。

Unix 版は Linux (Ubuntu) で開発されているため、コマンドの置き場所が FreeBSD と違い、 /bin/sh の仕様も違う
FreeFEM++ は長年 gcc, gfortran で開発されてきたため、 FreeBSD の clang, clang++, flang ではコンパイルできない部分がある
src/femlib/CheckPtr.cp で FreeBSD では廃止された <malloc.h> を使っている
FreeBSD の ports/graphics/libGLU (/usr/local/lib/libGLU.so) を使うと、描画で使われる ff-glut が crush するため、描画できなくなる

ソースコード中の sh script の shebang が #!/bin/sh, #!/bin/bash, #!/usr/bin/perl, #!/bin/wget など、 FreeBSD では存在しない場所が指定されているため、この対応が不可欠で、しかも、Linux の /bin/sh には bash とか dash が使われているため、一部の sh script が FreeBSD の /bin/sh では期待された動作になりません。

以下、上記の問題に対処して、作業ディレクトリ /var/local/src/ff で、 FreeFEM v4.42 を FreeBSD-12.1 で compile する方法の１例を説明します。

1. ソースコードの入手

ソースコードは

https://github.com/FreeFem//FreeFem-sources/archive/v4.4.2.tar.gz

から入手して /var/local/src/ff に展開するか、 git (ports/devel/git) コマンドがインストールしてあれば、

git clone https://github.com/FreeFem/FreeFem-sources /var/local/src/ff

で用意します。

2. パッチ

下記のパッチをあてます。

--- src/femlib/CheckPtr.cpp.orig	2019-12-04 12:27:35.821471000 +0900
+++ src/femlib/CheckPtr.cpp	2019-12-04 14:10:38.525992000 +0900
@@ -25,13 +25,7 @@
  void* operator new (std::size_t size, const std::nothrow_t& nothrow_value) noexcept;
  p
  */
-#if __APPLE__
-#include <malloc/malloc.h>
-#elif __FreeBSD__
-#include <stdlib.h>
-#else
-#include <malloc.h>
-#endif
+#include <cstdlib>
 
 static long verbosity;
 
--- bin/script/PostInstall.m4.orig	2019-12-04 14:16:58.967627000 +0900
+++ bin/script/PostInstall.m4	2019-12-04 14:17:51.216325000 +0900
@@ -1,4 +1,4 @@
-#!/bin/sh
+#!/bin/bash
 # "-DFF__FVER=$(PACKAGE_VERSION)" 
 # "-DFF_BINDIR=$(bindir)" 
 # "-DFF__DATADIR=$(pkgdatadir)
---

3. libGLU の変更

#glu-9.0.1.tar.xz の用意

ports/graphics/libGLU で作成した /usr/local/lib/libGLU.so は g++ で使えません(ffglut が crush する)ので、正常に動作する ff-glut を作るために、 gcc でコンパイルした /usr/local/lib/libGLU.so で置き換えます。

  # cd /usr/ports/grahics/libGLU
  # make deinstall
  # patch <<!
--- Makefile.orig	2019-10-31 10:04:58.000000000 +0900
+++ Makefile	2019-12-04 13:16:38.254399000 +0900
@@ -11,6 +11,8 @@
 MAINTAINER=	x11@FreeBSD.org
 COMMENT=	OpenGL utility library
 
+USE_GCC=	9+
+
 USES=		gl libtool pathfix pkgconfig tar:xz xorg
 GNU_CONFIGURE=	yes
 CONFIGURE_ARGS=	--disable-static
!
  # make install clean

なお、FreeBSD の libGLU.so を利用せずに、独自に libGLU を作ってリンクする場合は、 ff++4.42-with-libGLU.a.html を見てください。

4. コンパイル

前もって、 ports/shells/bash, ports/devel/gmake, ports/devel/cmake, ports/devel/autoconf, ports/devel/libtool, ports/devel/git, ports/ftp/wget ports/lang/gcc, ports/graphics/freeglut, ports/graphics/libGLU がインストールされていることを確認してください。

4.1. Linux 環境の作成

ソースの中に書かれている make を gmake にしたり、スクリプトの先頭に書かれた '#! /bash', '#! /usr/bin/perl', '#! /usr/bin/wget' に対応するため、root 権限で一時的に Linux 環境を作ります。

  # ln -s /usr/local/bin/perl /usr/bin/perl
  # ln -s /usr/local/bin/wget /usr/bin/wget
  # ln -s /usr/local/bin/bash /bin/bash
  # mv /usr/bin/make /usr/bin/make.bsd
  # ln -s /usr/local/bin/gmake /usr/bin/make

このコンパイル環境の切替えは面倒なので、こういったスクリプトを作っておくと良いと思います。

4.2. FreeFEM v4.42 のコンパイル

gcc, gfortran, freeglut を使った構成で MPI(Message Passing Interface) なしの FreeFem++ をコンパイルします。

  cd /var/local/src/ff
  autoreconf -i
  3rdparty/getall -a
  ./configure --enable-download -without-mpi CC=gcc CXX=g++ FC=gfortran \
	CXXCPP="gfortran -E" F77=gfortran \
	CFLAGS="-I/usr/local/include" \
	CXXFLAGS="-I/usr/local/include"
  make

src/nw に ffglut, FreeFem++, FreeFem++-nw ができていることを確認します。

ffglut は例えば savemesh(Th, "x.msh") でファイルに書き出した x.msh の内容を "ffglut < x.msh" で表示するプログラムで、 FreeFem++ が画像出力時に呼び出します。

4.4. FreeFEM v4.42 のインストール

root 権限でインストールします。

  cd /var/local/src/ff
  make install

これで、

  /usr/locl/bin/ff-get-dep,ff-pkg-download,ff-c++,ffmaster,ffmedit,ffglut,
	FreeFem++-nw,FreeFem++
  /usr/local/lib/ff++/4.4-2/bin/*,etc/*,idp/*,lib/*
  /usr/local/share/FreeFEM/4.4-2/*,FreeFEM-documentation.pdf

ができます。

以前は library を /usr/local/lib に直接置いていましたが、 v3.61 から /usr/local/lib/ff++/version/* に分離してわかりやすくなりました。 example, document の置き場所も以前の /usr/local/share/freefem++ から /usr/local/share/FreeFEM/version/examples, /usr/local/share/FreeFEM/FreeFEM-documentation.pdf に変わっています。

動作確認は

  cd /usr/local/share/FreeFEM/4.4-2/examples/misc
  FreeFem++ demo.edp

などを試してください。以前のバージョンと比べて、 3d などかなり充実してきました。

4.4. 不要ファイルの削除

FreeFEM++ の動作確認ができれば、不要なファイルを削除します。

  cd /usr/local/src/ff
  make clean

4.5. FreeBSD 環境に戻す

root 権限で一時的に変更した make や bash, perl, wget を元に戻します。

  # rm /usr/bin/perl /usr/bin/wget /usr/bin/make /bin/bash
  # mv /usr/bin/make.bsd /usr/bin/make

平林浩一, 2019-12-04