奪い合いのふるさと - 土地の奪い合い

東京から転居して、最初に驚いたものの1つが、土地の境界紛争でした。 1 晩で畑の境界が変わってしまうといった話は、 地元の知人の何人かから聞いていたのですが、 実際、職場の土地の境界の杭が、いつのまにか内部に動いてきて、 隣の畑が広くなるのです。

そこで、将来の紛争を防ぐために、移動できない柵を作ろうということになって、 隣の畑の持主に話したら、 「1 m 引っ込めるのが、この土地の慣習」だと頑張られて、 土木工事業者は首を傾げていましたから、 信州の慣習ではなくて、 塩尻の慣習かもしれませんが、 100 m^2 を越える土地が、お隣さんに移動します。 その後、その持ち主は、ごね得の土地込で、その畑をワイン会社に売り払い、 今度はワイナリー廃棄物の悪臭公害に泣かされるはめに陥りました。

一方、 私が暮らす社宅のある場所が、 「赤線(注1)」 と呼ばれる狭い国有道路(注2)に面しているのですが、 この道路もまた奪い合いの対象になっていて、 そのやりかたには下記のような類形があるようです。

例えば、社宅の真向かいの住宅の例だと、 増築と庭木の2段階で拡張した結果、 もともと狭い道がさらに狭くなり、 社宅の門柱が通行する車両で絶えず壊されるので、 取り払って社宅の土地を少し道路の一部として提供したところ、 待ってましたと庭木の前を敷石で拡張してきたもので、 この方法で、他人の土地まで取り込んでゆく作戦でしょうか。

次ぎは、その隣家の事例で、 こちらは、住宅を新築した後、 後退線の前に大きな庭石を運びこんで拡張。 さらに庭木を植えて庭石の外側に枝を伸ばし、 その後プランターでさらに広げるという作戦。 「男手がないので雪かきはできない」家でも、ここまでやります。

さらにその隣は庭木で拡張。 そのまた隣は集合住宅ですが、 道路の一部も駐車場に取り込む設計で、 その向かい家は庭木で広げる手法で対抗します。

建築前に後退線を越えて塀を作ってしまうケースでは、 赤線終点の駐車場。 近くの税務事務所の所有地みたいですが、 この事務所は「コンプライアンスのご指導」も業務の1つみたいで、 こういった美味しい話しを教えてくれるのでしょうか。

注1 - 赤線

ここで言う赤線は風俗営業の意味ではなく、 法的には「法定外公共用物」と呼ばれる認定外道路で、 本来は国有地でしたが、 2005 年に所有権が市町村に移動したようで、 「里道」 とも呼ばれるそうです。

注2 - 道路の幅員

道路の幅というのは、第 2 次大戦より前、昭和 13 年に「市街地建築物法」で、 それ以前の 9 尺(2.7 m) から 4 m に変更され、 戦後、昭和 25 年の「建築基準法」に引き継がれたということですが、 幅員 4 m 未満の道路に接する敷地に建物を建てる場合、建物の軒、門、塀、 フェンスなどは道路の中心から 2 m 以内に建築または築造してはならないことになっています。

ただ、近くに住む塩尻市の職員だったという人の話しでは 「地元の住人には適用されない」と言うことで、 確かに、この社宅に面する道路で、この法律を守っているのは、 私が住む社宅とその隣家だけで、共にこの土地の「余所者」ですから、 塩尻市がそういった奪い合い運用をしている可能性もあります。 そう言えば、最初の事例も塩尻商工会議所の職員さんだという話しでした。

この事例では、市役所の職員が境界の杭を打って、 「ここまでは建物を建てても良い」と言ったと主張していますので、 事実であれば、塩尻市が違法指南をしていることになります。 何とも不思議な話しですから、 念のため「市長への手紙」で、このページの記述に誤りがないか確認してほしいと 伝えてありますが、特に否定もしないようで、 塩尻市として、こういった法律を守る意志がない、のは間違いないようです。

では、日本中がそうかというと、 余所者も公平に扱う自治体もあって、塩尻とは大違い。

それにしても、道路の管理責任者である市役所の見解も確認しておくべきだろうと、 聞いてみたところ、 上記の話しは間違いない(市役所公認)ようです (建築住宅課建築指導係/都築さん, 2011-10-24 16:00 頃の電話解答)。 つまり、市役所も法律を知らないわけで、 このあたりが八戸などとの違いかもしれません。

転勤で県内のあちこちで暮らした人の話しでは、 「豪雪地帯は助け合い、塩尻は奪い合う」と言うのですが、 土地柄もあるのでしょうか。

少し調べて見ると、この問題に対する方針は市によって、かなり違っていて、 後退線に埋設する杭を支給する程度から、 積極的に寄付してもらって市道として整備するところなど、 いろいろあります。 つまり、その土地の首長の方針とリーダシップが鍵になるわけで、 塩尻の場合は奪い合いの風土が根本にあるのは間違いなさそうです。