カタログデータの見方 - 電気特性

ケーブル(電線)の電気特性は 低周波高周波で必要な特性(パラメータ)が変わってきます。

電線から見た、低周波と高周波の違いは、 電線を伝わる電磁波の反射が問題になるかどうかで決まり、 問題にならなければ低周波、問題になれば高周波です。 この境界は電線の長さが電線を伝わる電磁波の波長の 1/10 程度になります。 低周波で電磁波の反射が問題にならないのは、 信号がほとんど変化しないうちに、反射の影響が薄れるためです。

電線から見た場合、

  電線の長さ / 電線を伝わる電磁波の波長 << 1 なら低周波
  電線の長さ / 電線を伝わる電磁波の波長 >> 1 なら高周波
だということを忘れないでください。周波数の大小で決まるわけではありません。 信号波形が正弦波以外の場合は、 最も高い周波数成分(スペクトル)の波長と比べます。

電磁波の波長は次式から得られます。

  λ = Vp / f
  ここに、
	λ = 電磁波の波長 (m)
	Vp = 電磁波の位相速度 (m/s)
	f = 電磁波の周波数 (Hz)
高周波の位相速度は次式で計算します。
  Vp = c * Vr
  ここに、
	c = 真空中の光速 (299,792,458 m/s)
	Vr = ケーブルの速度係数 (0 < Vr <= 1)
	   = 1 / sqrt(εs)
	εs = ケーブルの誘電体の(等価)比誘電率 (1 <= εs)
比誘電率はポリエチレンで 2.3 程度ですから、 ポリエチレン絶縁同軸ケーブルの高周波に於ける速度係数は 0.66 程度になります。 低周波の速度係数は高周波の速度係数より小さくなります。

伝送線路理論では、低周波の特性を一次定数(primary parameters)、 高周波の特性を二次特性(secondary parameters)と呼びます。

エネルギ伝送だけを考えれば、上記の特性で十分ですが、 この他、用途によっては、 下記のような特性も考慮しなければならない場合があります。

マイクロフォニックスは機械的振動などで発生する静電気に起因するノイズで、 高インピーダンス回路で電線を使うとき問題になります。

遮蔽(シールド)効果は、導電結合(共通インピーダンス結合)、 電磁結合(相互インダクタンス結合)、静電結合(相互キャパシタンス結合)、 電磁波結合といった物理的の異なるメカニズへの対策を含みますので、注意が必要です。 つまり、この用語自体が曖昧です。